3/23 内閣委員会(経済安全保障推進法案①)
質問要旨
1 政府の基本姿勢
2 総 論
・重要事項を閣議決定や政省令に委ねたことの問題
・「経済安全保障」を定義しなかった理由
・経済活動の自由とのバランス(特に第5条関係)
・なぜ今回の4分野なのか(エネルギー安全保障や食料安全保障との関係)
3 各論4分野のうち
(1)サプライチェーンの強靭化
・自由貿易、国際分業、企業努力との関係
・特定重要物資の対象範囲(「真に必要な物資」とは)など
(2)基幹インフラの安全性・信頼性の確保
・対象範囲の明確化(「真に必要な事業、事業者、設備」とは)
・勧告・命令について(特に導入後、事後的な計画変更や中止)など
要求大臣等:小林大臣
議事録
○本庄委員 立憲民主党の本庄知史です。
ようやく委員会審議がスタートいたしました。これから何度か質疑をさせていただきたいと思っております。是非どうぞよろしくお願いをいたします。同じ千葉の先輩として、大変敬意を表しておりますので、よろしくどうぞお願いします。
最初に、まず、経済安全保障に関しましての我が党の基本的なスタンスについて御説明をしたいと思います。
我が党は、さきの衆議院選挙の公約において、経済安全保障を確立するため、我が国の先端技術の優位性を確保し、経済活動などにおけるルール形成戦略を強化します、こういった記載もさせていただいております。したがって、経済安全保障の重要性、必要性については十分に認識をしている、そういう前提で議論をさせていただきたいと思います。
今回の法案が出てくるという段になりまして、党にプロジェクトチームを設けました。そこでは、様々、有識者、経済団体などからヒアリング、意見交換を重ねてまいりました。自由で開かれた経済活動、民間活力と経済成長、そして経済安全保障の実効性の確保、こういった観点から今回の政府の提出法案の内容、そして経済界などから寄せられている懸念について精査をさせていただき、今回の法案の課題の整理をさせていただいております。
今日は、委員会の初日ということですので、基本的な事項についてお伺いをしてまいりたいと思います。
本法案の中身に入る前に、大変残念なんですけれども、政府の基本姿勢ということでお尋ねをしなければならないというふうに思っております。
藤井前経済安保法制準備室長の非違行為、そして政府の調査結果について、端的に一つお伺いをしておきたいと思います。
この調査結果では、情報漏えいについて確認はされなかった、こういう記載になっております。岸田総理も、先週の本会議で、この法案に関する情報の流出を含め、藤井氏の法案に対する不当な関与は確認されていない、こういう言い方です。
私、確認していないということと、なかったということは、別なんじゃないかというふうに思うんですが、この点について確認をいたします。情報漏えいはなかった、こういう認識でよろしいでしょうか。
○小林国務大臣 お答え申し上げます。
まず、今日、最初ですから申し上げますと、藤井氏の一連の非違行為というのは、行政の公正性、中立性について国民の皆様の疑念を生じさせるなど、極めて不適切であったと考えております。国民の皆様の関心が今高いこの法案の審議を控える時期にこうした事案が生じたことについては、この法案の担当大臣として大変重く受け止めております。
既に、私から法制準備室の今の室長に対しまして、引き続き、室員の綱紀粛正、そして適正な業務の遂行を徹底すべく指導するよう改めて伝えたところでございまして、その上で、現在御審議いただいているこの法案は、我が国にとって喫緊の課題である経済安保の確保に不可欠なものであると考えておりますので、担当大臣として全力で取り組んでいきたいと考えております。
その上で、まず、法案への影響という観点から申し上げますと、予算委員会などにおきましてもう何度も出ている話でございますが、十六回に及ぶ有識者会議などを経たものであって、与野党、経済団体あるいは労働組合、様々な方々との意見交換を重ねて策定したものである。繰り返しになるんですけれども、特定個人の一存で法案の内容がゆがめられる余地は構造上ない、この点は累次申し上げているとおりでございます。
その中で、今回、藤井氏に対して行った調査、これは非違行為に対する人事上の調査でございますが、その上で、今回、法案に関する情報の流出を含め、藤井氏の法案に対する不当な関与は確認されなかったと承知をしております。
更に申し上げますと、この法案の責任者は担当大臣である私です。
今御審議いただいておりますこの法案、本文だけで百条近くに上りますけれども、附則を含めて逐条で、これは一条一条、私、あと、先ほどまでいた大野副大臣、そして今の室長の泉さん始め今日陪席している審議官、またその後ろに座っている参事官、そして若手の職員、文字どおり膝詰めで一つ一つ確かめました。二月の下旬に閣議決定に至るまで、本当にその瞬間に至るまで、連日、ああでもない、こうでもない、ここを変えた方がいい、元に戻した方がいい、連日、法案が変わっていったんですね。
それで、最後は、私が担当大臣として、全て見た上で、責任を持って今回この法案でいこうというふうに決定をさせていただいたので、そういう法案だということで御理解いただければと思います。
○本庄委員 私がお伺いしたのは、確認をできなかったではなくて、なかった、そういう断定でよろしいのか、私はその一点しか聞いておりませんが、いかがでしょうか。
○室田政府参考人 お答え申し上げます。
先生御指摘のように、調査報告書等においては、確認できなかったという言葉を使わせていただいております。これは、私どもの判断といたしまして、調査を全力で最大限行った結果として、現時点では、ないという判断をしているというふうに御理解をいただければと思います。
○本庄委員 今回の事案、単なる公務員の非違行為とは違って、こういった安全保障の問題に関わる事案だということ。そして、今回の法案でも議論になっておりますが、政府と事業者との様々な規制や支援の関係というものが生じていく、そういう法案の作成の過程で起きた事案だということ。通常の事案よりもはるかに重要度が高い、こういう御認識、大臣はお持ちだと思いますが、そういう観点で、我々、予算委員会そして内閣委員会でも藤井さんの参考人招致を求めておりますが、引き続きこの件を要求してまいりたいというふうに考えておりますので、委員長、よろしくお願いをいたします。
それから、二点目、お伺いしたいと思います。基本姿勢のところで。
今、大臣、様々な関係者から意見を聞いて法案を作成したというお話がございました。有識者の会議、十六回開催されております。非常に精力的にやられたと思うんですが、ここで、例えば、どなたかヒアリングに呼ばれたりされたんでしょうか。
○小林国務大臣 この十六回に及ぶ有識者会議におきましては、基本的には、外部から更なる方を呼ぶというのではなくて、十八名の方にそもそも参加していただいたんですけれども、そのメンバーを選ぶ際に、経済界やアカデミアを含めたかなり幅広い立場の方から、お声をかけさせていただいて集まっていただいたということでございます。
○本庄委員 関連する審議会というのも各省にあったと思うんですけれども、しかし、そういうのを動かしてもいないと思うんですね。例えば特許に関しての産構審。この十六回の中に、弁理士さん、日本弁理士会なんかも、話を一度も聞かれていない、こういうふうにおっしゃっています。
本当にどこまで話を聞かれたのか。もちろん内々にはいろいろなところからお話を聞かれていたんだと思いますが、やはりこういう法案の作成プロセスにおいては、ある程度オフィシャルに、そして見える形でいろいろなところからの意見聴取をしていただいて、そしてそれをオープンにしていただくということも必要だったのではないかなというふうに思いますが、その点、いかがでしょうか。
○小林国務大臣 委員御指摘の点も分かります。ただ、その意見を聞くときに、じゃ、どこまで本当に聞けばいいのかという議論もあろうかと思っています。
当然、今御指摘いただいたように、有識者会議だけではなくて、この法制準備室、様々スタッフがおりますけれども、この法案を策定する過程におきまして、経済団体、そして専門家の方との間で、一般的な情報交換の一環として、平素より様々な形で意思疎通ややり取りを行ってきているところでございますので、そうした様々ないただいた御意見をこちらの方でそしゃくをしながら法案の策定に臨んだということでございます。
○本庄委員 準備室の方が訪問してヒアリングをされた、とある団体の方からは、突然来られて、そして中身もよく分からないまま、お話をして帰られた、こういう話をしている人もいらっしゃいました。
是非、これから具体的な中身を、基本指針あるいは政省令を定めていく過程にあっては、オープンな形でしっかりと議論、意見を聞いていく、そういうことをやっていただきたいというふうに思いますので、この場をかりてお願いしておきたいというふうに思います。
それでは、法案の中身について。
まず、総論なんですけれども、今回の法案、非常に分かりづらいと思います。そう思っている方は多いんじゃないかと思うんですね。もちろん、難しいということは別にして、なぜ分かりづらいか。
一つは、法形式の問題。これは、基本法的な部分と実施法的な部分がない交ぜになっている。それぞれの、例えば特許なんかがそうですね、特許法というのがあるにもかかわらず、今回はこの推進法の中に組み込まれる形で制度が変わる、こういった点が第一。
そして第二は、今日、國重委員が大変いい議論をされているなと思って聞いておりましたけれども、具体的な、しかも重要なことが法律に書かれていない、基本方針、基本指針、政省令に落とし込まれている。したがって、骨組みは見えているんだけれども中身がよく見えない、この点があろうかと思います。
私、一点目について答弁は求めませんが、この二点目の、重要な問題について法案ではなくて基本方針、基本指針、政省令という、要は政府が決めるというところに落とし込まれているところは、問題点はるる指摘もあったと思いますが、大臣の御見解をお願いします。
○小林国務大臣 お答えいたします。
あらゆる事項を全て法律に規定することは、やはり困難であると考えます。行政の複雑性と行政に求められる機動性に対応するためには、必ずしも適切とは言い難いとも考えられます。このため、場合によって、法律が明示した一定の事項については下位法令等に委任することが必要と考えられると捉えています。
この法案においてですけれども、法案全体の基本的な考え方を定める基本方針、そして制度ごとに策定する基本指針については、委員御案内のとおり閣議決定することとしておりまして、また、様々な、各柱の措置の対象となる物資ですとかあるいは事業、そして技術分野などをこうした下位法令に委任しているところでございます。
それぞれの委任事項につきましては、例えば、基本方針や基本指針につきましては閣議決定をする事項を法律で規定しております。物資につきましては要件を法律上明確に示す、そして、事業については、法律上の要件の下で、法律上に限定的に列挙する十四事業の中から定めることとする、そして、技術分野については、法律上の要件の下、国際特許分類などをもって定めることとするというような形で、法律上、可能な限り明確化するよう努めているところでございます。
○本庄委員 その法律に書かれていることがどこまで明確かということだと思います。もちろん全てを書くことはできないということはよく分かりますが、今書かれているものが、果たして、じゃ、十分なのか、法律として十分なのかという観点もあると思いますので、その点はちょっと後でまた取り上げて質問させていただきたいと思います。
分かりづらい点、第三。これは、やはり定義の話なんですが、これまでも議論が出ておりますけれども、経済安全保障の定義、これが法案の中には明記をされていないということです。
経済界からも、例えば同友会は、経済安全保障の定義とともに、規制及び支援の対象範囲を明確にしてもらいたい、こういった要望、意見も出ておりましたけれども、小林大臣が事務局長を務めておられた自民党の提言、あそこの中には、我が国の生存、独立及び繁栄を経済面から確保すること、こういう定義づけがなされていて、ある意味分かりやすいと思います。
今回、こういった定義を採用されなかったのはどういった理由でしょうか。
○小林国務大臣 経済安全保障は多岐にわたる新しい課題であって、我が国を含めて、その定義という意味では、主要国において確立したものがあるわけではありません。この法案においても特段定義づけというのは行っておりませんが、あえて分かりやすく申し上げれば、国家そして国民の安全を経済面から確保することと言えるのではないかと思います、それを定義と言うかどうかは別として。
アメリカにおいても、今のバイデン政権でも、たしか昨年だったと思いますが、ナショナル・セキュリティー・ストラテジー・ガイダンスの暫定版というものが出ていて、エコノミック・セキュリティー・イズ・ナショナル・セキュリティーと書いているんですね。トランプ政権のときの国家安保戦略にもエコノミック・セキュリティー・イズ・ナショナル・セキュリティーと書いてあって、これを定義と言うかどうかは別として、経済安全保障は国家安全保障なのである、そういう基本的な考え方というか理念が示されています。同じようなものだと捉えていますけれども。
その上で、この法案におきましては、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進することを目的とし、委員御案内の四項目について制度整備を行うとしておりまして、経済安保の定義を、この法案として定義を要するものではないと考えております。
もう一点申し上げれば、経済安全保障というのは、冒頭申し上げたとおり、多岐にわたる概念だと捉えています。この法案は、非常に重要な法案として、喫緊の課題のうち分野横断的で法整備が必要なものとして今回四項目取り上げさせていただいていますけれども、当然これが全てを網羅しているわけではないということは付言させていただきたいと思います。
○本庄委員 今大臣がおっしゃいました、最初は、定義かどうか分かりませんがと前置きをした上でお話をいただきましたけれども、例えば、岸田総理は本会議でこういうことをおっしゃっています。経済構造の自律性の確保、我が国の優位性、不可欠性の獲得、基本的価値やルールに基づく国際秩序の維持強化を目標として、そのための経済施策を総合的、効果的に推進していくこと。
これが定義なのかどうかは分かりません。ただ、この法案を議論するに当たって、経済安全保障という言葉もなければ、安全保障の定義も出てこないということでは、私は議論として不十分だというふうに考えております。
答弁でもちろんお答えいただくということを期待をしておりますけれども、文書の形でしっかりと、この委員会に、政府が今考えている経済安全保障の定義について、考え方を示していただきたいというふうに思いますので、委員長、よろしくお願いいたします。
○上野委員長 理事会で協議いたします。
○本庄委員 次に、もう一点、重要だと私ども考えています経済活動と自由とのバランスに関してです。特に、第五条関係ですね。
先ほど國重委員からもありました、公明党さんの御主張でこういった留意事項が入ったということなんですが、本来であれば、基本原則、基本理念としてしっかりとたがをはめるべき内容じゃないかな、留意なんというものではなくてですね。そう思いながらお伺いをしているんですが、しかし、それでもなお気になる部分があります。
この法案には、規制措置は、安全保障を確保するため合理的に必要と認められる限度、こういうふうな記述になっておりますが、そもそも合理的でない政策なんというのはないと思うんですね。何が言いたいか。合理的な限度というのが、果たして、たがになっているのかということです。
例えば外為法を見ますと、必要最小限の管理、調整、必要最小限、こういうたがのはめ方です。あるいは先般成立した重要土地利用規制法、これも、必要最小限度の措置ということで、合理的というような表現は使っておりません。
武器の使用なんかで合理的という言葉が出てくる法律は確かにありますけれども、私は、この経済規制あるいは支援の今回の法案については、必要最小限という表記が適切ではないかというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○小林国務大臣 我が国の法体系において、様々、あまた法案があります。それぞれの法律に趣旨、目的がありますので、何か決まった言い方をしなければいけないというものではないと思っております。
先ほど、國重委員の質問にも答えさせていただきましたが、経済安保の取組を進める上でやはり重要なのは、企業の経済活動やアカデミアの研究活動が原則自由である大前提に立つこと、そしてこれらを大きく阻害することのないようにすることが重要だというふうに思っています。この法案による制度創設の際にも、この安全保障の確保と自由な経済活動の両立を図るということが重要だと思っています。
その上で、委員が今言及されたこの法案によって講ずる規制措置は、自由な経済活動の制約要因となり得るものですから、第五条におきまして、経済活動に与える影響を考慮し、安全保障を確保するため合理的に必要と認められる限度において行わなければならないということを規定しております。
この自由な経済活動との両立を図る観点から、規制を必要最小限度のものとするように努めることは当然であると考えておりますが、国際情勢の変化などに伴う安全保障上のリスクというのは当然変動しますので、予測し難い側面もございますことから、あらかじめ一律に必要最小限度とは規定せずに、あえて、合理的に必要と認められる限度と規定したところでございます。
○泉政府参考人 お答え申し上げます。
この法案は、法律上、附則に見直し条項というのが書いてございます。これは三年をめどにという条文が書いてございますが、もちろん、その三年をめどに云々ということではなくて、随時、不断に見直しを検討していくということでございまして、その過程の中では、それぞれの、この法律に基づいて実施した措置がどういう効果があるのか、そういったことは政府としては十分に検討していく、こういうことでございます。
○本庄委員 私の趣旨は、もうちょっとその実態面、運用面での検証という意味だったんですが。附則の見直しの規定というのももちろん大事なことだと思いますけれども、この合理的な範囲の中できちっと政策が行われるのかどうか、ここが非常に重要なところだというふうなことを一言申し上げておきたいと思います。
次に、基本方針についてお伺いしたいと思います。
この法案第二条、経済安全保障は、四分野、基本的な事項を定める、こういうことです。岸田総理は、先週、本会議で、政府が閣議決定する基本方針においては、この法案における規制措置の実施についての基本的な考え方を明示的に定めるという御答弁をされています。
私は、本来は、この基本方針ぐらいまでは、その柱ぐらいまでは法律にやはり書き込むべきだったんじゃないのかなと思いながら、しかし、政府がどういうことを書こうとしているのかということが、法律には要素は書かれておりますが、イメージがよく分からないというふうに思ってまいりましたので、大臣から、どういったことを考えていらっしゃるのか、お聞かせください。
○小林国務大臣 お答え申し上げます。
その前に、前の質問で少し付言させていただきますと、やはり、しっかりと関係者と丁寧にコミュニケーションを取りながら、一つ一つその仕組みをつくっていくということ、そういうたてつけに法案がなっているということは委員に御理解いただければと思います。
その上で、二条の基本方針の骨格についてでございますけれども、この第二条におきまして、安全保障を確保するための経済施策について、国際情勢、社会経済構造などを踏まえて、統一的に、また整合性を確保しつつ実施するためにこの基本的な方針を定めることとしているというたてつけです。
ここでは、まず、第一号において、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する基本的な事項を定めることになります。具体的に申し上げると、政策の必要性と考え方、規制が経済活動の自由を不当に阻害することがないようにすること、また、国際法の遵守、事業者等の自主性の尊重、また企業の責任ある行動の促進などについて定めることを想定しているところであります。
次いで、二条の第二号についてでございますけれども、本法案に基づく経済施策の一体的な実施に関する基本的な事項を定めることになります。具体的には、各施策の対象の指定に当たって施策相互の連携を考慮すべきこと、さらに、各施策において基本指針、府省令などを定める際には、有識者の意見を十分に聴取すべきことなどを規定することが想定されるところであります。
さらに、第三号についてでございますけれども、これは、安全保障の確保に関して、総合的かつ効果的に推進すべきその他、その他というのは四つの施策以外のことですけれども、この経済施策に関する基本的な事項を定めることになります。これについても具体的に申し上げますと、国民の生活を支える重要な産業が抱える脆弱性、そして強みの点検、見直しを進めるべきこと、またさらに、安全保障の確保のためには、本法案に基づく措置が効果的に施行されるよう、他の施策も統一的、整合的に講じるべきことなどを定めることが想定されます。
最後に、二条の第四号についてでございますけれども、その他、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関し必要な事項を定めることになりますが、具体的には、必要に応じ、基本方針の見直しに関する事項、また関係省庁との連絡調整に関する事項、さらに、指針や府省令など、政策内容について周知、広報を図るべきことなどについて規定することを想定しているところでございます。
なお、具体的な内容につきましては、法施行後に、国際情勢、社会環境、また関係行政機関との調整などを踏まえて策定することになると考えております。
○本庄委員 大変御丁寧な御説明、ありがとうございます。
今お聞きしていても、今ぐらいのことまでは法律に書けなかったのかな、もうちょっとダイエットさせてスリムにはしなきゃいけないかもしれないけれども、今御説明になったぐらいのことは法律に書いた方がよかったんじゃないかと思いますが、基本方針の骨格ですね、大臣、いかが思いますか。
○小林国務大臣 最後に申し上げましたけれども、今後の国際情勢や社会環境などを含めて、そういうことを踏まえた上で書いていかなければ、作っていかなければならないものですので、そこにはおのずと限界があるということは御理解いただきたいと思います。
済みません、先ほどのちょっと訂正なんですけれども、本庄委員への、基本方針に関する御質問への答弁の中で、法案の条項、二条の二号、三号、四号と申し上げましたが、正確には二条第二項の二号、三号、四号でございましたので、訂正をいたしたいと思います。
○本庄委員 ありがとうございます。
それでは、時間の許す限り、ちょっと各論の方に入っていきたいと思いますが、各論の中の総論というような、基本的なことを幾つかお伺いしたいと思います。
まず、サプライチェーンの強靱化と言われているところですけれども、基本認識、改めてお伺いをしておきたいと思います。もちろん、国内生産あるいは国産ということは望ましいかもしれないし、やれるのならやった方がいいのかもしれません。
でも、一方で、それはそれでリスクがあって、例えば災害に見舞われた場合、あるいは特定の企業がシェアをしているときに、その企業が海外に買収をされてしまったり、あるいは倒産をしてしまったり、いろいろなリスクがあるので、やはり分散していく、あるいは多角化していくということが、リスクの回避という観点から見れば重要なんだろうというふうに思います。
一方で、根本問題として、この日本という国がどうやって生きているかといえば、これは自由貿易体制、そして国際分業の中で経済的な価値を高めて利益を得ている、そして国益を増大させているという国ですから、決して、保護主義あるいは国内、国産、そういう路線でのサプライチェーンの強靱化というふうにならないということを、大臣の基本的な考えとして確認をさせていただきたいと思います。
○小林国務大臣 サプライチェーンのグローバル化の中で、各民間事業者が経済合理性を追求した結果、個別事業者にとっては経済合理性があったとしても、我が国全体としては供給途絶リスクを内包するケースが実際には発生してしまったということでございます。実際に、重要な物資の供給不足や供給の途絶に陥った事例がございました。
そうしたこともしっかりと念頭に置いて、この法案によって、安定供給確保を図ることが特に必要と認められる物資につきましては、平時からサプライチェーンの強靱化を図る枠組みをつくっていこうとしているものであります。当然、その強靱化を図るに当たっては、今回のこの法案のたてつけというのは、民間事業者による自発的な取組に対する支援を通じてこの強靱化を図ることを基本としています。
また、民間事業者にとって負担を伴い得る取組でございますから、当該取組を支援することとした上で、国内生産基盤の整備に限らず、委員御指摘のように、供給源の多様化や生産技術の開発など、物資の特性に応じた多様な取組を支援可能なスキームとすることで、民間事業者の企業努力や国際分業の考え方も踏まえてサプライチェーンの強靱化が図られるようにしなければならないというふうに思っておりまして、決して保護主義に陥ってはならないというふうに考えております。
○本庄委員 ありがとうございます。
そういう意味では、第七条で特定重要物資というのが定義をされております。私、ここの定義もちょっと広いんじゃないかなと思いながら実は読んでおりまして、今おっしゃったように、経済活動の自由とか企業の拘束をしないとか、あるいは民間活力ということを考えれば、なるべく対象は広くならない方が恐らく望ましいんだろうと思います。
計画に参加しない企業も例えば調査の対象にはなってしまったりするわけですね。そういう意味では、この七条ですけれども、例えばですけれども、「外部に過度に依存し、」、これは分かりますが、「依存するおそれがある」なんですね。これは果たしてどのぐらい予見可能なことなんだろうというふうに思うんです。
例えば、今、私、ちょっと手元に太陽光パネルの輸入割合というのがあるんですけれども、平成二十三年、二二%でした。令和二年度、八四%になっております。これは果たして予見可能だったのかどうか。あるいは、今、スマホなんかもほとんど国産ができていない、メーカーもアップルやサムスンになっている。これは果たして、かつて予見できたんでしょうか。
私、今回のこの規定の依存するおそれという要件は、相当広く取り得るし、あるいは、分からないままある程度判断をしていかなきゃいけない漠然とした記述だというふうに思っておりまして、適切ではないというふうに考えておりますが、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
○小林国務大臣 将来のことをどれだけ予見できるのかというのを定量的に語るということは極めて困難だと思います。
その上で、今委員が、今回のたてつけというのが広いではないかという話だったんですけれども、そのおそれというところも含めて、ちょっと法案のたてつけを申し上げさせていただくと、特定重要物資の指定に当たりましては、第七条に規定しているとおり、幾つかの段階を踏んで絞っていっています。
まず一つが、国民の生活に必要不可欠若しくは広く国民生活、経済活動が依拠している重要な物資であること。その次に、外部に過度に依存しているのか、又は、今御指摘のあった、又は依存するおそれがあるのかというところ。そして、三つ目として、外部から行われる行為により国家及び国民の安全を損なう事態を未然に防止する必要があるということ。四つ目のハードルとして、当該物資等の安定供給確保を図る必要が特に認められること。この四つの要件で絞り込むこととしております。
なので、こうした形で、できる限り絞っていこうとしておりますので、そこは御理解いただきたいと思いますし、この考え方、要件などにつきましては、あくまで有識者の方々の意見を聞いた上で、安定供給確保の基本方針によって具体的に定めることとしておりまして、民間事業者の予見可能性を確保し、また指定の対象は真に必要な物資に絞り込んでいく、そういう考え方で進めていきたいと考えます。
○本庄委員 先ほど、特定重要物資の例示という話がありましたね。イメージを持ちながらいろいろ議論をした方が本当はいいんだろうと思いますが、これは難しいんでしょうか。何か例示をしていただいてということが可能であれば、これは委員会での審議に資すると思うんですけれども、政府の方からそういったものを提出いただけないでしょうか。
○小林国務大臣 今申し上げたとおり、まだこれは法案審議が始まったばかりですし、この法案が仮に成立した後、様々な、そういう政省令を含めて、基本指針も含めてやっていくものですから、予断を持ってこの場で特定の物資を挙げるということは控えたいというふうに思っています。
その上であえて申し上げますと、昨年のいわゆる骨太方針二〇二一におきましては、半導体、あるいは電池、レアアースを含めた重要鉱物、あるいは医薬品、こうしたものの強靱化に取り組んでいくというふうにされておりますので、そうした点も踏まえて考えていきたいというふうに考えております。
○本庄委員 この条文に書かれた定義だけを見れば、マスクとかスマホとかいろいろなものが当てはまるようにも読める、そういう広い規定になっておりますので、是非、本会議でも答弁された、真に必要な物資に絞り込むということをみんなに見える形でこの後進めていっていただきたいなというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
次に、基幹インフラの方の話に議論を移したいと思いますけれども、安定供給確保支援法人、それから安定供給確保独立行政法人ということが規定をされております。第三十一条一項、主務大臣は、一般社団法人や一般財団法人等を特定重要物資ごとに安定供給確保支援法人として指定できるということですが、どういった法人を想定されているのか、あるいはその選定の基準といったものがあれば御説明をお願いします。
○小林国務大臣 お答え申し上げます。
一点、ちょっと申し上げますと、今委員から、次、インフラの話というふうにありましたが、これ自体はまだサプライチェーンパートですので、御理解いただければと思います。
この法案では、政策目的である特定重要物資の安定供給の確保に向けた取組を物資の特性などを踏まえまして効果的に支援していくために、まず、特定重要物資ごとに独立行政法人若しくは一般社団法人などのいずれかを安定供給確保支援業務を行う法人として指定をした上で、指定された独法あるいは一般社団法人などが、事業者が行う認定供給確保計画に沿った特定重要物資の安定供給確保のための取組を支援すること、そういうたてつけになっております。
この法案の中で、支援を行うことができる、可能な独法には、独立行政法人の個別法で定める目的上、生産基盤の整備、そして生産技術開発などを支援することができる独立行政法人として、いわゆるNEDO、JOGMEC、そして医療基盤・健康・栄養研究所、基盤研、これを規定しておりまして、所管大臣がこれらの独法による支援が効果的だと判断する場合には安定供給確保支援独立行政法人として指定をし、活用することとなると考えております。
他方で、一般社団法人などにつきましては、これを支援法人として指定するに当たっては、支援業務を適正かつ確実に実施できる経理的基礎そして技術的能力を有しているか、また、支援業務の実施体制が安定供給確保基本指針に照らし適切であるかといった、客観的に審査の上、指定することにしております。
この安定供給確保支援法人は、一般社団法人などの申請により指定することとなるため、現時点ではいかなる法人が指定されるかは決まっておりませんが、指定する際には、今申し上げた、支援業務を適正に実施できるか否かといった観点などを踏まえて判断をしてまいりたいと考えております。
○本庄委員 ありがとうございます。ちょっと言い間違えました。失礼しました。
インフラの方に、次、行きたいと思います。
また、対象範囲の明確化についてお尋ねをしたいんですが、国会での答弁でも、大臣も、真に必要なものに限定するということはおっしゃっていますが、経済界なんかからは、例えば同友会は、規制対象となる事業、事業者、設備について、どのような基準で分類するか法律に明記してほしい、こういう意見も出ておりました。
そういう中で、今回、特定社会基盤事業というのは、主務省令で定める基準云々ということで、外縁しか示されないということになっております。この点について、大臣の今の御見解、法律に明記しなかったということについてのお考えをお聞きしたいと思います。
○小林国務大臣 基幹インフラに関する制度につきましては、委員御指摘のとおり、我が国の安全保障と経済活動の自由を両立する形で、予見可能性に配慮した制度設計を行っていくことが重要だと考えているのは同じです。
この点、有識者会議の提言におきましても、規制によって事業者の経済活動を過度に制約しないよう配慮することが重要であって、規制によって達成しようとする国家国民の安全と事業者の経済活動の自由とのバランスが取れた制度とすることが必要といった御意見をいただいており、これは大変重く受け止めているところでございます。
このため、インフラに関する制度につきましては、事業の外縁を条文上明確化して、その上で、事業、事業者、設備それぞれについて、対象とする基本的な考え方は法文上で示した上で、各事業の実態に応じて、国家及び国民の安全に与える影響に鑑み真に必要なものに絞っていく制度としているところでございます。
具体的には、閣議決定する基本指針において、例えば、国家及び国民の安全と事業者の経済活動の自由とのバランスを取る観点から、今申し上げた、対象を真に必要なものに限定すること、そして、規制対象事業者の指定基準について、事業規模あるいは代替可能性などを考慮要素とすること、そして、規制対象を定める政省令の制定に当たりましては、産業界とよく調整するとともに、パブコメなどによって広く事業者や国民の意見を聞くことなどを定めることを想定しておりまして、こうした規定を通じて、この対象を真に必要な範囲に絞っていきたいという考えであります。
○本庄委員 先ほどのサプライチェーンの基本指針もそうですし、今回の重要インフラの方もそうなんですが、この指針、非常に重要だと思います。これから法律が成立した後は肝になってくるところだと思うんですが、大臣に非常に丁寧に御答弁いただいたと思うんですね。法律に書けとまでは言いませんが、書面で、文書で、是非委員会にお示しいただけるとありがたいなと思いますので、御検討ください。よろしくお願いいたします。
○上野委員長 後刻、理事会で協議いたします。
○本庄委員 その上で、勧告、命令の中で、導入後、事後的な変更についてお尋ねをしたいと思うんですが、法案の中に、五十五条、国際情勢の変化その他の事情の変化により、必要な措置を取るよう勧告、命令ができるとなっています。
これもかなり広い規定に読めるんですね。国際情勢の変化というのもいろいろなものがあり得ますし、その他の事情の変化に至っては、何のことを指しているのかも分かりません。さらには、必要な措置が取れるということで、かなり広く、そして漠然的な規定だというふうに思うんですけれども、政府の裁量、権限が大きい規定だというふうに私は読みますが、この点について大臣のお考えをお聞かせください。
○小林国務大臣 お尋ねいただいた事後的な勧告、命令についてですけれども、これも有識者会議の提言におきまして、事後的にも発動可能な仕組みとすべきとされつつも、事業者への影響が大きい事後的な措置の発動は極めて限定的な場面に限られるべきであって、また、勧告などを事後的に行う場合は、事業者の負担に留意した内容とすべきとされたところでございます。
また、委員御指摘のとおり、経済団体からも、事後的な勧告、命令というのは極めて限定的な場面にしてほしいということと、負担に配慮すべきというような意見も示されているところでございます。
こうした意見をしっかりと踏まえまして、既に導入等計画書についての事前審査を受けた場合の事後的な勧告につきましては、委員御指摘のような、政府の裁量に委ねるということではなくて、法文上、国際情勢の変化等の事情の変更によりと限定的な場合に適用することを明記した上で、勧告の内容につきましても、事業者の負担軽減や特定社会基盤事業の継続性確保の観点から、特定重要設備の検査又は点検の実施ということで例示をしているところでございます。
この事後的な勧告の具体的な運用を含めた基本的な事項につきましては、閣議決定する基本指針において定める予定でございますが、その際には、今御紹介させていただいた有識者会議の提言ですとか、あるいは経済団体、また労働組合の皆様からの御意見を踏まえるとともに、パブコメなどを通じて、幅広い関係者の意見をしっかりと聞いてやっていきたいと考えています。
○本庄委員 時間が来ましたので終わりますが、小林大臣が大臣である限りは、恐らくこの法律は非常に適正に施行されて運営されていくんだろうというふうに思いながら聞いていますけれども、やはり制度なので、どういう状況になってもきちっと経済活動の自由と過度な規制をしないということが担保される、そういう法律にしていきたい、そのための議論をしていきたいと思いますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。