4/6 憲法審査会(発言)
質問要旨
日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題(国会議員の任期延長と「憲法の空文化」の問題について)
1.国会議員の任期延長
2.憲法の空文化
(1)専守防衛
(2)財政民主主義
3.国会と内閣の関係
議事録
○本庄委員 立憲民主党・無所属の本庄知史です。
まず、国会議員の任期延長について、この間の議論を拝聴してきた所感を一言申し述べます。
大規模な武力攻撃や災害が発生した場合において、特定の地域だけでなく全国的規模で国政選挙が実施できないという状況にどれほどの現実味があるのか私はいまだに疑問ですが、仮定に仮定を重ねた議論や抽象論ではなく、立法事実の精査がまず必要であるというふうに考えます。
そして、仮に選挙困難事態があり得るとしても、そういった究極の事態を念頭に、どうすれば国政選挙を実施する機能を維持できるのか、平時からどのようなバックアップ体制を取るべきかといった、より現実的な政策論がなされないまま、国会議員の任期延長という憲法論だけが先行して議論されていることは、この場が憲法審査会であるということを差し引いても、国会機能の維持という観点からは、私はバランスを失していると感じています。
その上で、本日は、憲法の空文化の問題について二点申し述べたいと思います。
第一に、専守防衛の空文化です。
予算委員会に続き、一昨日の本会議でも、国家安全保障戦略など安保三文書について質疑が行われましたが、相変わらず議論はかみ合わず、深まらないままです。その最大の要因は、従来より国会で積み上げてきた憲法解釈が変容している可能性があるにもかかわらず、岸田総理始め、政府が憲法論に正面から答えていないからです。
例えば、今回我が国が保有するとするミサイル反撃能力について、岸田総理は必要最小限度の実力行使と繰り返していますが、必要最小限度の反撃能力の行使とはいかなるものなのか、必要最小限度を超える、すなわち憲法違反となる反撃能力の行使があるのか、あるとすれば、その二つを分ける基準は何なのか。また、反撃能力の行使についても、他に適当な手段がないという要件は変わらないと答弁していますが、日米同盟が機能しない場合に我が国自身が備える必要があるとしても、日米同盟が存在する中で他に選択肢がないという要件を満たすのは一体どういう状況なのか。あるいは、政府は、反撃能力行使が憲法上許されるという考えは存立危機事態における反撃能力の行使にもそのまま当てはまるとの見解ですが、なぜそのまま当てはまると言えるのか。我が国自身が攻撃された武力攻撃事態と我が国自身が直接攻撃されていない存立危機事態を同列に論じることが、憲法上例外的に許容される反撃能力の行使についても可能なのか。
このように、政府が掲げる反撃能力については憲法上の論点が山積しています。しかしながら、政府は、専守防衛は変わらない、新三要件に照らし個別具体的に判断すると念仏のように答弁するばかりで、これでは、国会としての役割を、責任を果たせません。前回も申し述べましたが、反撃能力については当審査会でも議論を深めるべき憲法課題であると改めて問題提起をさせていただきます。
第二に、財政民主主義の空文化です。
政府は、先月、三月二十八日、昨年度の令和四年度予算で計上した、コロナ、物価高騰対策予備費から二・二兆円の使用を閣議決定しました。年度末まで残り四日、しかも、新年度、令和五年度予算が成立した同じ日に、駆け込みで二・二兆円もの税金を政府の一存で使用を決定したわけです。
昨年度、令和四年度だけを見ても、当初予算で五・五兆円、補正予算で六・三兆円、計十二兆円弱という、まさに異次元の予備費が計上されました。その規模も使途も、憲法第八十七条に規定する予見し難い予算の不足に充てるための予備費とは到底言えないものです。
こういった巨額の予備費は、近年常態化しています。今年度、令和五年度予算でも五・五兆円の予備費が計上されました。リーマン・ショック渦中の経済予備費が一兆円だったことを考えても、余りに過大で、憲法の趣旨を完全に逸脱しています。
巨額の基金も問題です。その最たる例が、昨年十二月に成立した令和四年度第二次補正予算です。年度末まで残り四か月というタイミングで、五十の基金に計八・九兆円もの予算が措置されました。中長期的な政策の複数年度の財源となる基金は、予算単年度主義を定めた憲法第八十六条と財政法十一条のいわば例外であり、巨額の基金はこれらの規定の趣旨に反するものであると考えます。
このような巨額の予備費や基金は、財政民主主義、すなわち、国民の税金の使い道は国民を代表する国会が決めるという大原則を有名無実化します。政府・与党による恣意的な財政支出を許し、健全財政を阻害しかねません。財政民主主義の在り方もまた、当審査会で討議すべき憲法課題であると提起させていただきます。
以上申し述べました安全保障と財政という国家の基本に関する憲法規定の空文化は、与野党の問題ではなく、国会と内閣の問題、すなわち国会の存在意義の問題です。この認識を当審査会の議員各位に共有していただけることを切に願い、私の発言を終わります。
以上です。