国会質問アーカイブ

4/18 憲法審査会(発言)

本庄さとしYouTube

質問要旨

1.基本的な考え方
2.自民党・中谷筆頭幹事「議論の到達点」について
3.合憲性・違憲性を問われている立法こそ積極的に議論を

議事録

(基本的な考え方)

もとより、憲法は第96条で改正について規定しています。憲法自身がその改正を所与の前提としている以上、国会で議論を尽くし、必要があれば、改正を発議することは当然のことです。

この点においては、改憲派も護憲派も、与党も野党も関係ありません。問題はその中身です。

(自民党・中谷筆頭幹事「議論の到達点」について)

先週、4月11日の本審査会で、自民党の中谷筆頭幹事より、「これまでの議論の到達点」として3点、「緊急事態条項、特に国会機能維持」「憲法における自衛隊の明記」、そして「教育の充実」について言及がありました。

私は前回総選挙より2年半、本審査会での議論に参加してきましたが、中谷筆頭幹事が挙げた3点について、意見を申し述べたいと思います。

第一に国会機能維持、そのための議員任期の延長について、確かに議論は盛んですが、肝心の立法事実について、認識が共有されているとは思えません。

そこで確認しますが、中谷筆頭幹事は、衆議院総選挙や参議院選挙の実施が「全国の広範な地域で困難」であり、かつ、それが「相当程度長期間に及ぶ場合」と述べておられますが、それは一体どういう状況でしょうか。

例えば、2011年に発生した東日本大震災では、直後の首長・地方議員選挙が数か月延期されたものの、それは東北地方の被災3県に限られた措置でした。

1995年の阪神淡路大震災でも、直後の首長・地方議員選挙が延期されましたが、延期は40日余りで、かつ兵庫県、神戸市など4つの被災自治体に過ぎません。

さらに1923年、首都直下型の関東大震災、このときは明治憲法下の緊急勅令により、府県議会議員の任期が延長されましたが、これも東京府、神奈川県、埼玉県など一部被災地に留まっています。

また、いずれの大震災でも国会機能は維持されており、震災後の国会議員の選挙も期日通り実施されています。

こういった過去の事例も踏まえた上で、日本全国で長期間選挙が実施できない状況、国会機能が維持できない状況とは一体いかなる場合なのか、中谷筆頭幹事から具体的にご説明いただきたいと思います。

第二に、憲法における自衛隊の明記ですが、これも立法事実が示されていません。

私が昨年11月に本審査会で申し述べたように、現在自衛隊が憲法に明記されていないことによる法的・政策的支障は具体的に見当たりません。

また、違憲論争に終止符を打つためであれば、それは、仮に自衛隊を明記しても、行使する自衛権の内容などをめぐって、合憲の自衛隊か違憲の自衛隊かといった議論は今後も続き、改正の意味を成しません。

第三に、教育の充実に至っては、無償化も含め、憲法問題ですらありません。

教育を受ける権利を定めた憲法第26条が、義務教育以外の教育の充実や無償化を禁じたものでないことは文言上明らかです。

むしろ、意欲と能力がありながら、経済的な理由で義務教育以上の教育を受けられない子どもたちは、第26条が規定する「その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利」を侵害されていると解すことさえできます。

いたずらに憲法問題として議論する時間と労力があれば、速やかに法律と予算で対応すべきです。

以上のとおり、中谷筆頭幹事が「到達点」とされている3点は、憲法改正や条文化作業はおろか、改正を必要とする立法事実すらはっきりしないものです。

憲法改正を主張される方々のご高説を伺っていると、何とかもっともらしい改正の理由を見つけようと、さながら「改憲の青い鳥」を探すがごとくですが、そのために本審査会を毎週開催する意味がどれほどあるのか、甚だ疑問です。

(合憲性・違憲性を問われている立法こそ積極的に議論を)

それでもなお、「開催することに意義がある」とすれば、それは、現行憲法の遵守状況、とりわけ、合憲性・違憲性が問われている立法について、本審査会で積極的に議論することであると考えます。

例えば、先ほど國重委員も取り上げた同性婚の他、昨年10月に最高裁が違憲判決を下した、手術要件を伴う戸籍上の性別変更、あるいは「国会で議論し、判断すべき事柄」として、最高裁から国会にボールが投げられたまま、長年放置されている選択的夫婦別姓などが挙げられます。

こういった現実的な憲法課題について積極的に議論し、国会における立法をリードしていくことも、本審査会の重要な役割であるということを申し上げ、私の発言といたします。