かわら版 号外 NHK闘論! 2/22 予算委員会「本庄さとしvs岸田総理」
昨年11月以来、二度目の岸田総理との論戦。保険証廃止の問題点、「ミサイル反撃能力」、周辺有事の日米事前協議制度などについて議論しました。特に、「反撃能力」は国のあり方を考える上で大変重要な課題であり、30分では議論が尽くせませんでした。これまでの政府説明はまだまだ不十分であり、引き続き深い論戦が必要です。
■保険証廃止の問題点、性的マイノリティへの配慮
政府は、来年秋に現在の健康保険証を廃止し、「マイナ保険証」としてマイナンバーカードと一体化する方針です。
私もそのメリットは理解しています。しかし、「マイナ保険証」を持ちたくない、持てない人にとっては、従来の保険証で十分です。メリット云々は「お国の余計なお世話」で、そうした方々を「保険証を人質」に追い込んでいくような今の政府やり方には、非常に問題があリます。
私は何度も「保険証廃止の必要性」を問いましたが、総理の答弁は「マイナ保険証の必要性」や「行政側のメリット」に終始し、回答はありませんでした。
また、政府は「マイナ保険証」の未取得者には、新たに紙の「資格確認証」なるものを発行するとしています。今の保険証との違いも分からず、ムダなお金が使われるだけではないかと指摘しましたが、これも回答はありませんでした。
さらに、マイナ保険証の場合、戸籍上の本名と性別がオモテ面に記載されますが、これは性的マイノリティ(性同一性障害やLGBT当事者)の方々には、精神的・心理的苦痛をもたらします。私は「ウラ面記載など健康保険証並みの配慮が必要だ」と問題提起しましたが、総理は「検討する」との答弁のみでした。
総理の決断力のなさを残念に思うとともに、その本気度が疑われました。ここにも岸田政権のLGBTはじめ性的マイノリティへの消極的な姿勢が見て取れます。
■いまだ政府は示さない「ミサイル反撃能力」行使の類型・事例
予算委員会では、複数の委員が「ミサイル反撃能力」の行使について、事例を示すべきと求めてきました。私も改めて総理に問いましたが、「具体的に、どのような説明が分かりやすいものか、調整を進めている」と、気の抜けたような答弁でした。
しかし、これは43兆円の防衛費の使い道とセットの議論であり、政府が安全保障政策の大転換と言っている、そのキモの部分。「憲法の海外派兵禁止の原則の例外として許容する」際どい問題でもあり、相当丁寧な議論が必要です。
さらには、国会との関係です。基本は「事前」承認ですが、ミサイル反撃については、そのスピード感から言って、「事後」承認になる可能性が高いと言えます。したがって、国会審議の中で、様々な類型や事例を今から議論しておかないと、何でも政府への白紙委任となり、国会としての役割が果たせません。「反撃能力」の行使について、具体的な事例が分かる資料を速やかに提出するよう、厳しく指摘しました。
■「ミサイル反撃能力」と「存立危機事態8事例」との関係
政府の国家安全保障戦略には、「ミサイル反撃能力」について、「憲法上可能だとした1956年の政府見解は、2015年平和安全法制の武力行使の三要件の下で行われる自衛の措置にもそのまま当てはまる」と書かれています。つまり、存立危機事態の状況で、日本自身が攻撃を受けていなくてもミサイル攻撃が可能だという見解です。
総理は「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険、これが存在しなければ、存立危機事態の要件を満たすことがない」と説明しますが、そもそも「存立危機事態」の定義が極めて曖昧です。
政府は2015年の安保法制の議論で、存立危機事態の8つの事例を示しました。1つは中東・ペルシャ湾のホルムズ海峡での機雷掃海活動です。
本来、他国の領域内で日本は武力行使をしないというのが憲法上の大原則です。ホルムズ海峡の事例は例外中の例外ですが、その理由は「深刻なエネルギー危機、国民生活への死活的な影響、石油が途絶し、日本が大変なことになる」ということで、日本自身は武力攻撃を受けていなくても、武力行使できるという論理です。
もう1つ、2014年の国会答弁で、岸田総理(当時、外務大臣)は、「日米同盟に基づく米軍の存在と活動は、我が国の平和と安定を維持するうえで死活的に重要であり、米軍に対する武力攻撃は存立危機事態に当てはまる可能性が高い」と答弁しています。
その事例が、米国に向け、我が国上空を通過する弾道ミサイル迎撃です。当時、安倍総理もは「迎撃できる」と答弁しています。このときはミサイル「迎撃」でしたが、「反撃能力」を保有すれば、相手国の本土にまで反撃が可能になるというのが政府の見解です。
私は「相当に攻撃対象の範囲が広がる」と考え、総理に答弁を求めました。総理からは「本当に対応する手段がないのか、厳密に考えていくことが重要」との説明がありましたが、論理上攻撃は可能、ということが改めて明らかになりました。
■何も決まっていない日米事前協議制度
周辺有事も現実味を帯びるなか、日米安保条約に基づく「事前協議制度」も極めて重要な問題です。在日米軍基地から米軍が戦闘行動に出ることは、その後の日本に対する報復攻撃などを考えれば、日本自身が武力行使をするのと等しいぐらいの重要かつ重大な判断であり、国会や国民に対する十分な説明も私は求められます。
ところが、日米間も国内も、明文化された手続き規定がありません。誰が(どこが)決めるのか、閣議や安保会議は開くのかもはっきりしません。
私は「事前協議のルールや仕組みについて、国内そして日米間で、明文化した規定を設けるべきだ」と総理に提案しましたが、総理は「行政府の専権に属するものであり、事前協議の諾否の決定は、政府の責任において行う」としか答弁されませんでした。
これは、安全保障に関する最も重要な課題の1つです。きちんと民主的なプロセスが確保されるよう、今後も粘り強く議論していきます。
2023年2月27日