かわら版Vol.29「亡国の防衛予算倍増」
■防衛財源確保法案
5月23日の衆院本会議で、今後5年間の防衛予算の裏付けとなる「防衛財源確保法案」が可決されました。私は、その2日後の憲法審査会で、この法案の問題点について取り上げました。
法案の正式名称は「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案」です。
しかし、それは名ばかりであり、実体は「防衛力の抜本的な強化」にも「必要な財源の確保」にもならない重大な欠陥法案です。
日本の政策課題は防衛だけではありません。にもかかわらず、政府・与党は「防衛費倍増」「GDP比2%」といった数字ありきで、5年で43兆円もの常軌を逸した予算を防衛に注ぎ込もうとしています。子ども・子育て、教育、社会保障、物価高対策など他の政策との優先順位やバランスも、財政状況も考慮されていません。
このままでは、日本は内側から壊れてしまいます。国破れて防衛あり、では冗談にもなりません。
■瀕死の財政民主主義
憲法は財政民主主義を定めていますが、それが今、空文化しています。その最たるものが巨額の予備費です。
予備費は予算審議の中で具体的な使途が議論されず、事後に形式的な議決がなされるのみで、事実上、政府の自由裁量となっています。
例えば昨年度、2022年度は当初予算と補正予算で合計約12兆円もの予備費が計上されました。予算総額の1割に相当する規模ですが、そのうち4兆円近くが不用額として使われない見込みです。
もはや憲法に規定する「予見し難い予算の不足に充てるため」の予備費と言える状況ではありませんが、本年度予算でもまた、5.5兆円も計上されています。しかも、その財源は実質的には赤字国債、借金です。
今回の防衛財源確保法案は、この巨額の予備費の不用額が決算剰余金として防衛財源になるという、まるで国家的マネーロンダリングのような仕組みを採用しています。
巨額の予備費を計上し、事実上それを別の政策に流用するこの法案は、憲法の財政民主主義の趣旨に反するものです。
税金の使い道は国民を代表する国会で決めるという財政民主主義は、今や瀕死の状態です。この認識を憲法審査会で共有し、財政民主主義のあり方について、集中的に討議すべきです。
2023年6月1日