かわら版

かわら版Vol.40「 開かれた国益 」

■立憲民主党訪中団
8月27日から31日まで実質4日間、立憲民主党の代表団のメンバーとして、岡田克也幹事長(団長)以下議員4名で、中国の北京と深圳(シンセン)を訪問しました。立憲民主党の公式訪中団は結党以来初めてです。

私自身は、2005年に初めて中国を訪問して以来、4回目の訪問となります。首都・北京だけでなく、上海、遼寧省、河南省など地方にも足を運んできました。

今回の訪中団最大のミッションは、中国共産党との党間交流です。党幹部の相互訪問や中堅・若手議員の交流などについて、両党間で覚書を交わしました。

外交は政府の専管事項とよく言いますが、党の力が強い中国との関係では、政党外交、議員外交が特に重要です。日中関係が停滞するなかで、立憲民主党としても、私個人としても、しっかりと役割を果たしていきたいと考えています。

■日中間の懸案事項
北京では、中連部(中国共産党中央対外連絡部)の劉建超部長(閣僚級)や、最高幹部の一人、石泰峰・党中央統一戦線工作部長ら党幹部と会談しました。

会談のテーマは、党間交流や今後の日中関係といった前向きな話だけではありません。福島第一原発のALPS処理水、水産物・農産物の輸入制限、邦人拘束事案、短期ビザ免除の再開、領空侵犯事案、台湾問題など、多岐にわたる日中間の懸案事項について意見交換しました。

率直に言って、議論は平行線でした。しかし、日中の政治家が正面から議論を重ね、一定の共通認識や信頼関係をつくることが、両国の平和と繁栄、ひいてはアジア地域の平和と繁栄につながると確信しています。

■中国経済の最先端・深圳
訪中団は今回、広東省の深圳も訪問しました。深圳は鄧小平時代、改革開放政策の経済特区から始まり、今や上海と並んで中国経済を牽引する存在です。

ファーウェイ、テンセント、BYD、DJIなど世界に冠たる最先端テクノロジー企業が集積する一方、スタートアップ(起業)も盛んで、さながら「躍動する新陳代謝」といった様相です。3万人の漁村だった深圳は、わずか45年で1800万人の巨大都市となりました。

現地では、電気自動車を研究開発するトヨタとBYDの合弁会社、ITを駆使した医療機器や介護ロボのメーカー、ドローン配達の実用化実験(公園内で荷物受け取り)、秋葉原をしのぐ電子・電気部品街などを視察しました。まさに生き馬の目を抜くようなビジネスとイノベーションの最前線で、新たな挑戦と変化が日々繰り広げられていると感じました。

中国の指導部は、深圳を「中国の特色ある社会主義先行モデル」と位置付け、更なる改革と成長を推進しています。  

しかし、深圳の発展は、癒着やしがらみのないゼロからのスタート、自由で開かれたビジネスチャンス、若く新しい人材の流入といった、およそ「社会主義」とは異なる経済環境や価値観によって支えられてきました。深圳がこれからも自由で開かれた経済都市であることを強く期待しています。

■日中関係は「開かれた国益」の観点から
近年、日中間の貿易や投資は低迷し、一方で経済安全保障に力点が置かれるようになりました。確かに経済安保は重要です。しかし、保護主義、排外主義から持続的な繁栄は生まれません。それは、歴史の教訓でもあります。

14億もの人口を擁し、日本の4倍の経済規模を持つ巨人・中国と経済関係や人的交流を深めることは、日中双方の利益であり、それは平和と安定にもつながります。

こうした「開かれた国益」の観点から、今後の日中関係を大局的・長期的に考えることが重要です。